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Novels -小説ったってなぁ-マルキ・ド・サド『悪徳の栄え』渋澤龍彦訳こないだ買った『悪徳の栄え』。 実は店頭に下巻しかなかったんで下巻だけ読んだと言う無茶っぷり。でも多分、あれだよ。問題ないんじゃねえか、この内容なら。知らんけど。 内容はと言えば、エロとか残虐とかを扱ってる超画期的だった哲学的小説なのだけれど、実際のところは昔のギャグ漫画に近い支離滅裂っぷり。古典だからとか、昔はこれで超エロだったんだよ!とか言うことではないと思うんだー。ちゃんとバカのつもりで書いてるだろ、サド先生。 まあそんなことはどうでもいいんです。 読んだことはなくても、どんな内容だか、大体のところは知ってるでしょ、皆さん。 重要なのは日本語訳です。 渋澤先生の古めかしいエロ訳語が良過ぎ。まあそれがあるからこんな古典に手をつけたわけですが。お若気(にやけ)を物したり。千鳥しましょうよ、とか。埒を明けるぞ!なんて。 「鑢(やすり)をかける」って、あーた。どんな表現だ。痛そうだよ。ピストン運動のことなんですけど。他に痛いことしてる描写は一杯あるのに、そっちはすげえ淡白なんだもんしかし。 被虐者側からの描写がビタイチないので、ポルノにはならんのがミソと言えばミソと言えよう。変態趣味だとか残酷描写だとか言うよりは、夫人の殺戮珍道中、の方がしっくり来るわけです。 唯一、夫人が実子を手にかけるとこは、ちゃんと夫人の感情の変化を追って描写されてたのでちゃんと嫌な感じがしました。語り部たる夫人が、半分被虐者の側に立ってるから。 (上巻は結構そういう描写多いのかな。夫人がフランスを追われるくだりとか) あとフォンタンジュ嬢萌え。 (萌え、って、あーた) なんつーか多分、あの後、サイレントヒルばりに大変なことになるんだ。夫人が10年後に没するのは多分その所為。その詳細が作中で描かれてないのは、それ一本で別ジャンルになるからだな。 もしくは、スタンド能力発動。 もしくは、なんかリビングデッドっぽいキャラに転身。ティム・バートンに見出されてメイン・ヒロインに抜擢。 …その後のフォンタンジュ本、とかを、同人漫画でエロ明るく描いてみるのはどうだろう。 想像するにさー。ビジュアルがさー。うちの死体子さんと被るんだよ。両目えぐられたりしてるし。 動物たちとのお付き合い〜Dr.ヘリオットのシリーズロハスだ何だと騒がれるよりずっと以前から、それこそローマの昔から、田舎や農業への憧憬はずっと、本読みたちの間にはあった。 ヨークシャの田舎町、ダロビー(地名は架空)郊外を舞台に、農家や古いタイプの生活を守る人々と、彼らと彼らの動物のために朝から晩まで駆けずり回って全ての人々に感謝される、獣医ヘリオット先生の、自伝シリーズを今回ご推薦。 訳者が揃って優秀なのか、どれも読み易い。元の文章もそうらしいです。 著者のヘリオット先生が治療にあたっている間の全ての一喜一憂、命を救った瞬間の感情の昂ぶり、救えなかったときの遣り切れなさ、その後のさわやかな救い、そして随所に挿入される英国人らしいユーモア。それらが、妙なヒネリや装飾を交えずに、綺麗に素直に、そして詳細に丁寧に並んでいるのです。 そんな、テンポが良くて、嫌味がなくて、病気と怪我以外には悪役が登場しないと言っていいノンフィクション。その病気や怪我ですら、世界の一部としてちゃんと包括されている気がします。 動物が好きな人なら、まあ薦めなくても多分読んだことあるでしょう。 お定まりの注意を書き加えますが、コレ読んで犬とか飼いたくなっても、あんま簡単に飼わないこと。 佐藤友哉『鏡家サーガ』シリーズ。イライラッ!!ええ!?ハセガワサンがコレ勧めるの!?うっそー。 うそじゃねえデス本当です。 どうせあれじゃん?笹井一個がカバー描いてるから、買っちゃったんだろう? その通りだが、ちょっと黙ってろおめえ。 まず内容は、酷くオタク的な要素を積極的に扱っております。多分、作者は素でやっちゃってます。それくらいナチュラル・ボーン・キショイです。同い年だよハセガワサンと。やべえどうしよう、いろんな意味で。 んで。考証をあまり必要としないSF的裏設定をベースに、都市伝説風なソレも絡めつつ、ド変態である鏡家の男たちや、全国数千万人のボンクラ中高生のマゾッ気・サドッ気をそそらずには居られない、同じく鏡家の女たちが、殺人事件を軸に、犯人に酷いことをしたり、そもそも(以下略…隠すような真相でもないのだけれど、殺人事件を扱ってる時点でミステリに分類される可能性があるので秘匿)と言う、ただただ陰惨で理不尽で子供っぽくて読み難いけどテンポはよろしい。陰惨エロあり。そんなライトなのにヘヴィな小説。それが本作『鏡家サーガ』。ヘヴィな内容ってのは、昨今エロゲユーザーたちが口角に泡を飛ばして主張するような意味の重さではなく(実際にエロゲのストーリーが重いのか軽いのかは、知らん。丸でやったことねえし一生やらねえ。ただセックスと恋愛を扱ってる時点で、どう描いてもなにかしら重くはなるだろ。なにがしかの意味で…)、ただただ気分が重くなる。哀しくなるとか、人生について深く考えちゃうとかじゃなく。なんでこんなもん読んじゃったんだろ、と言う意味において。 え?え?ハセガワサン、一体この物件のナニを勧めたいの? よく聞いたな。でももうちょっと黙ってろ。 ハセガワサンは常に言います(自動翻訳風)。過ぎた不快感は娯楽足りえるのです。思えば、ジェットコースターの「キンタマキュー!」感や、恐怖映画のビビリ感、深夜に怪談を読んじゃった後の落ち着かなさ、雨の中を傘を差さずに歩く楽しさ、その他その他。これらは全て、本来なら不快感だよね。しかし、日常でそれらを必要以上に感じることはないので、たまには脳みそがそれを求めちゃうんだ。事務仕事を延々やってる人は、反復作業のもたらす脳内麻薬を休日に求めたりはしないが、それをやらないボンクラ学生などは、ネトゲのクリック作業やパチスロの反復作業に娯楽を見出すってわけ。会社員だってパチンコ打つじゃねえか、と思うかも知れないけど、あれは多分、「儲かるかも」と言う一縷の望みを言い訳にして、金を無駄遣いするカタルシスを得ているだけだろ。 それと同様に、この佐藤友哉の『鏡家サーガ』シリーズは、登場人物の性格設定や立ち居振る舞い、被害者・加害者たちの処遇から物語の展開の仕方に至るまで、周到に不快感や憤りを与えてくれる。しかし世の中には、そういうムカつく連中と実際に付き合って疲れている人も多かろうと思うので、これはそう言う日常を送っていない幸せな人のための、ちょっとした娯楽なのである。 散々けなしたように見えるけど、シリーズ一貫してそうなんだから、半分くらいは意図されてるよこれ。多分。 あとね。文芸的には、本当にオタク向けだよ。シリーズ内の他作にしか描かれていない部分を匂わせる描写をこれ見よがしに入れたり、そもそもオタクの好きなもののパロディが散りばめてあったり。ボンクラ中学生御用達だったジュニアノベルで言うとさ、神坂一の『スレイヤーズ!』シリーズでさ、ウェイトレスをやってる郷里の姉ちゃん、と言うキャラ(シリーズを最後まで読んでないのだけれど、世界最強の騎士か何からしい)の存在をチラホラ匂わせたりするじゃん。ムックとか読み込んでると分かるよねー、みたいなノリで。アレですよ。 |